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37歳のときに長唄今藤流の家元継承と、4代目を襲名され、
女性ながら多くの道を切り開いてきた今藤長十郎さん。その活動は日本だけに留まらず、
東南アジア、欧米など、海外での演奏会も積極的に敢行。
三味線という楽器の魅力、長唄の魅力を多くの人に知らせたいという思いで活動されています。
そんなポジティブなエネルギーにあふれたお家元の、パワーの秘訣を伺いました。

冨宅:三味線はとても素晴らしい楽器ですが、最近では見たことがない方も多くいらっしゃいます。そもそも三味線はいつ頃からあるものなのでしょう。

今藤:1500年代に、中国から日本に渡ってきたといわれています。琴や他の楽器は奏者とともに来たのですが、三味線は楽器だけが日本にもたらされたのだそうです。そこで、その弾き方を琵琶奏者が研究した。ですから、琵琶と同じように「バチ」を使うようになったのです。

冨宅:昔は、三味線のお稽古をたしなまれる方が多くいらっしゃったのですよね。

今藤:歌舞伎の音楽として長唄が発展し、江戸時代後期には音楽として独立し、栄えました。江戸時代に一世を風靡したと言えます。道を歩けば、あちこちから三味線の音が聞こえてきたそうです。でも明治以降、音楽教育が洋楽一辺倒になったこともあり、聴く機会も徐々に少なくなりました。私は大阪芸大で三味線音楽について教えたり、文化庁の取り組みの一環として小学校、中学校に出向いて演奏や話をすることがありますが、小さい子どもたちのほうが三味線音楽を自然に受け入れてくれる気がしますね。

冨宅:先入観がないほうがかえっていいのですね

今藤:三味線は、形だけでなく、音色や楽器の特色も世界でも独自の楽器です。他の楽器とあまりに違うので、慣れないと違和感をおぼえる人もいるかもしれません。ですから、幼稚園、小学校低学年までに良質の三味線音楽をお聴かせする機会をもっと増やせればなと思います。

冨宅:三味線は深い感動を覚え、心豊かにしてくれる音楽ですので、多くの方に聴いていただきたいです。昨年9月、ニューヨークのカーネギーホールで行われた演奏会「今藤長十郎 三味線の響inニューヨーク」が、大盛況だったと伺いました。反応はいかがでしたか?

今藤:いいものを吸収しようという姿勢は、日本よりも高いように感じました。海外での三味線音楽である長唄はまだ新しいジャンルの音楽です。エネルギーがあるうちに、次の世代に継承していくことが私の役目だと思っています。



今藤 長十郎
長唄今藤流四世家元/長唄三味線演奏家、作曲家。4歳で初舞台。1984年四世今藤長十郎襲名、家元継承。毎年のリサイタル「三味線の響」公演(92年~)。今藤同門会。長唄協会演奏会等。毎年、京都宮川町「京おどり」作曲(84年~)等。文化庁長官表彰(2009年)一般社団法人長唄協会常任理事。大阪芸大客員教授。国立劇場技能養成所講師。NHK文化センター講師。学校法人 東山学園教授。(本年5月、歌舞伎座にて三世今藤長十郎追善公演を予定)。
冨宅:三味線の音色に魅せられて、私がお家元について三味線を習って15年になります。勧進帳のような歴史を題材とした壮大な曲があったり、音色で人の感情を表現する繊細な曲や、虫の声で季節感を表現できたり。とても幅広い楽器です。

今藤:三味線という楽器の魅力は、胴のところは打楽器、棹のところは弦楽器、つまり打楽器と弦楽器が合体した音色が出せるところです。そんな楽器は、世界でもほかにないでしょう。さらに、絹糸をよって作った弦は、1曲弾いている間に少しずつ伸びてきます。調弦を微調整しながら演奏するのですが、そこが三味線の難しいところでもあり、独特の面白さでもあります。

冨宅:長唄には何曲くらいありますか?

今藤:演奏される曲は200曲くらい。今藤だけが保管している古い曲も入れると何百曲とあります。プロになるなら150曲以上は暗記していないと。

冨宅:そんなにおぼえないといけないのですね。長唄は、オーケストラのように指揮者がいなくとも、ぴったり息が合って演奏が成り立っています。

今藤:それは立三味線と呼ばれる首席が指揮者の役目を兼ね、曲を構成、演出しているからです。合い間に「ハッ」とか「ヨッ」などの掛け声で間を取ったり、空気感で他の演奏者に伝え、成り立っています。

冨宅:日本人ならではの察し合いも三味線の魅力ですね。お家元が長唄の家元を継承され、4代目今藤長十郎を襲名されたとき、まだ37歳だったと聞いています。ずいぶんお若いときに重責を担われたのですね。

今藤:今思うとそうですね。でも、私は逆に、37歳になるまで父が生きていてくれてありがたかったなと思いました。もっと若かったら、もっと大変だったと。

冨宅社長
冨宅 孝子/とみたく たかこ
エルビュー株式会社 代表取締役社長。
1963年生まれ、ファッション、美容などの幅広い知識を生かし、美をトータルに追求している。日本の伝統文化にも造詣が深い。
冨宅:この世界は、男性社会という印象もありますが…。

今藤:長唄は特にね。だから大変でしたよ(笑)。現在、長唄協会で常任理事を務めていますが、あとにも先にも女性は私だけ。いまだにアウェーです。仕事は自分で切り開かなくてはならない。「三味線の響」という自身のリサイタルを始めて23年たちますが、自分の芸を少しでも多くの方にお知らせしないとわかってもらえないと思ったからです。「作曲しなさい」と父に言われて高校生の頃から作品を発表してきたのもよかったです。それがなかったら、今、これだけ世に出られていなかったかもしれません。

冨宅:跡を継ぐプレッシャーは相当なものでしたか?

今藤:なかったといえばウソになりますが、父は名人でしたから、その父の芸力や功績まで継承すると考えると大変でしょう。なので、そのプレッシャーを感じないように、自分はゼロからスタートしようと決めました。父が作ったものの上に立つのではなく、ゼロからのスタート。自分なりの「今藤長十郎」という道を歩もうと決めました。

冨宅:素晴らしいですね。

今藤:自分自身のテリトリーで、自分の良さを作り出すことが大切なんです。他人の真似ではなく、自分だけのものを切り開いていけば、100にはならなくても自分だけの10を生かすことができる。自分が持つ10を最大限生かさないと、申し訳ないという気持ちでした。
冨宅:いつも若々しくお美しい家元ですが、美容と健康のために何かされていることはありますか?

今藤:いえいえ。顔なんてついていればいいっていうタイプですから。美容に悪いことばかりしているの(笑)。いつも睡眠不足だし、不規則な生活、肌のお手入れも手抜き。悪いことだらけですが、エレクトーレを使わせていただいているので、なんとか保っています。

冨宅:それはとてもうれしいです。もう13年くらい使い続けてくださっているのですよね。

今藤:とても簡単なので使い続けられています。今ではすっかり乾燥しなくなりました。

冨宅:いつもツヤ肌でお美しいです。会社を立ち上げた当時、お家元がエレクトーレを気に入ってくださり、私の目の前でお弟子さんたちに電話をして、まとめて購入してくださったことがありました。とてもうれしかったです。今でも本当に感謝しております。

今藤:母も姉たちも、みんなで愛用しております。孝子さんがいつまでも美しいのは、エレクトーレを使っているからなのよね。

冨宅:お家元が思う美しい女性とはどんな女性ですか?

今藤:よく「30歳になったら自分の顔に責任を持ちましょう」と言われますが、顔には、その人の人となりが現れるわけですね。充実した生活を送っているか、いないのか。若いときは目鼻立ちのバランスにとらわれるかもしれないけど、人が美しいと感じるのはやはり中身です。生き方は、顔に表れるものだなとは思いますよね。

冨宅:そうですね。年齢を重ねれば重ねるほど、生き方が表れてくるものですね。お家元の芯の通った生き方、途一に励んでいらっしゃるお姿はとても美しく、尊敬しております。お忙しいのに陶芸、着物に絵を描いたりと、多趣味でもいらっしゃいますね。今日の着物もお家元の作品でとても気に入っています。

今藤:何かを創り出すのは好きなんです。着物でも陶芸でも、独学で自由気ままに創作しています。私の仕事は制約も多いし、きっちりやらなければいけません。でも、趣味のものは気分転換の意味も込めて、好き勝手にやりたいのです(笑)。日本文化の多くは、細かい決め事があります。でも、その一方で自由にやっているようにも見える。たとえば、長唄にはテンポの指定がありません。でも、それは適当とかめちゃくちゃではなく、下地があり、たくさんの知識のうえに立った自由なのです。1+1=2に終わらないところが、日本文化の魅力ですね。

冨宅:とても深いですね。5月には、私も出演させていただく、お父様の三十三回忌追善の演奏会がありますね。

今藤:はい。歌舞伎座で行います。古い歌舞伎座では父の七回忌、十三回忌追善演奏会をやりましたので、あちらの世に行った際には、「新旧両方の歌舞伎座で演奏会したわよ」と父に自慢しようかなと思っています(笑)。

冨宅:きっと盛大な会になると思います。これからも微力ですが、私も三味線の魅力を少しでも多くの方にお伝えできればと思っております。本日はお忙しいなか、貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。


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