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齋藤 薫
写真提供:藤澤靖子
 「何だか急にキレイになっちゃって」そういうふうに人を褒める時、とても自然にこうも聞いている。「何かいいことあった?」。女をいちばん短時間でキレイにするのは“恋愛”であると女はみんな知っているからである。
 事実、恋をすると女性ホルモンやPEAなど、複数の“恋愛ホルモン”が働いて、肌も瞳も自動的にうるうるしてくる。
 ただ残念ながらここで働く恋愛ホルモンの効果は、そう長くは続かない。気持ちが落ち着いてきた時にはもう効力は失われていて、ホルモンの宿命として“反動”というものが働き、リバウンドのように、キレイになった分だけ逆戻りしてしまうことがあるのも覚えておきたい。
 言いかえると"恋愛をすること"でのキレイは、勝手に分泌されるホルモンにすっかり頼ったもので、少々不安定。そういう意味からすれば、ある種"負のエネルギー"によって、意地でもキレイになってやる! と思う時の方がキレイが確実で、逆戻りもしにくいのかもしれない。

 もちろん"嫉妬"や"恨み"のような負の感情そのものは、間違っても人をキレイにしない。そうではなくて、その感情をそっくりエネルギーに変えるのだ。だいたいがマイナスから立ち上がる時の方が、自分の意志で"格上の女"になろうとするから、人の中で眠っていた潜在能力がハッキリ目覚めて、それが想像を超えるほど人をキレイにしたりするもの。
 そもそも人間は、潜在能力の90%以上を眠らせていると言われる。放っておけば、それらは一生目覚めないまま終わってしまう。でもだから、ある種"ショック療法"的に何事か"絶対キレイになりたい"と覚悟を決めさせる出来事でスイッチを意識的に入れるのが理想的。だから"幸せ"よりも一時的な不幸せの方が、ひとつ上の次元に自分を押し上げることが可能なのである。
 そしてもうひとつ。この眠れる潜在能力を呼び起こすスイッチとなるのが、実は一品の化粧品だったりする。初めて使った化粧品がたった1回で、自分を見違えるほどキレイにしてくれた時、不思議なことにその潜在能力の扉が開くのだ。自分もじつはもっとキレイになれるのだという気づきとともに自信が生まれた時、まさしく眠っていた能力が目を覚まし、新たなパワーをもたらしてくれるのである。
 それはたった1本のマスカラだったり、たった一品のクリームやマスクだったり。意外なほど身近な製品だったりするものなのだ。
 それどころか、これまで使ってきた化粧品をもう一度きちんと心をこめて使ってみようと思った時、今まで感じたことがない手応えを感じて、化粧品の真の役割に気づいて、潜在能力のスイッチが入ることもありうる。そういう奇跡の一品はすぐそばにあったりするものなのである。
 いずれにせよ、人が"突然キレイになる"って、そう難しいことではない。自分の中でキレイを覚醒させるだけなのだから。キレイになる本能がパッと目を覚ます瞬間、それを引き出してみてほしいのである。恋愛か、不幸感か、はたまた一品の化粧品で。
齋藤薫(さいとうかおる)
美容ジャーナリスト/エッセイスト
女性誌編集者を経て独立。女性誌において、 多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを掲載中。著書『されど“服”で人生は変わる』(講談社)が新書で登場。『The コンプレックス 幸せもキレイも欲しい21人の女』(中公文庫)、『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)他多数。
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